ひと昔前まで『塗料=油性塗料』というイメージがありました。ところが最近では、油性塗料の有機溶剤に多く用いられるVOC(揮発性有機化合物)がシックハウス症候群の原因のひとつとして人体に有害とされ、公共施設などでの使用が制限されつつあります。一方水性塗料はVOCの含有量が少なく、人体への影響や環境への配慮から、大きく需要を伸ばしています。多少耐久性では油性に劣るというデメリットもありますが、安全性が高く取り扱いが簡単な水性塗料は現代の主流となりつつあるようです。
水性塗料とは水に溶ける塗料・うすめ液に水を用いる塗料の総称です。ベースが水なので臭いはほとんどありません。また油性の場合、塗料の粘度が高く塗りにくい時や、塗装用具の洗浄時にはシンナー等を使用しますが、水性の場合は水を使用します。
シンナー等を使用しない水性タイプの塗料は、臭いが少なく発火の心配もないため扱いやすく、環境への負担も小さいというメリットがあります。また油性塗料に比べ価格も安価です。
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水性塗料と油性塗料の違いを表にて比較してみました。
水性塗料・油性塗料ともにメリット・デメリットはあります。塗装する素材や場所・環境などを考慮し選択しましょう。
水性塗料 |
油性塗料 |
【 希釈 (うすめ液) 】 |
水 |
シンナー等の有機溶剤 |
【 耐 久 性 】 |
〇 油性に比べ少し劣る |
◎ 抜群の耐久性 |
【 光 沢 】 |
△ |
〇 |
【 臭 い 】 |
◎ ほとんど無い |
✖ 臭気がきつい |
【 乾 燥 時 間 】 |
◎ 短時間で乾燥(30分〜1時間程度) |
△ 長時間(2時間〜4時間程度) |
【 価 格 】 |
◎ 安い |
△ 高い |
【 保 管 】 |
危険物ではないので 特に注意は必要としない |
危険物なので 特別な注意が必要 |
【 屋内での使用 】 |
臭気が少ないので 屋内での使用に向いている |
使用はできるが 臭気がきつく屋内の使用には不向き |
※上記は一般的な評価です。塗料の種類や性能により上記内容にあてはまらないものもあります。
 
『水性』というと水性インクのように水に濡れると落ちてしまうのでは・・・と考えてしまう人もいるでしょう。 が、もちろんそんなことはありません!
雨にさらされる屋外や浴室などの塗装にも水性塗料は用いられます。
塗料が乾く時に塗料の中に含まれる水が蒸発し、残った樹脂や顔料が固まり塗膜を作ります。塗膜中の粒子はくっつき合ってフィルムのような状態になるので水には溶け出しません。
乾く前の状態で水がかかると、塗料自体が流れてしまいますが、一度完全に乾いた塗料は水がかかっても落ちることはありません。したがって誤って手に付いてしまった塗料は、乾く前に水で洗い流すときれいに落ちます。また逆に、使用中の刷毛などは水に浸けておくと固まらないので、長時間塗装を中断する時には水に浸しておくと良いでしょう。
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水性塗料は性質上、一定期間放置すると分離してしまいます。これは水の中に溶けていた樹脂や顔料が沈殿する為に起こります。
分離しても塗料の性能には全く問題はないので、揉みながらよく振り、塗料を均一に混ぜ合わせてから使用するようにしましょう。また、よく混ぜないと色ムラの原因となるため注意しましょう。
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水性塗料の塗膜は塗料に含まれる水が蒸発することで固まりますが、湿度が高いと乾燥までの時間が極端に長くなってしまいます。そのため湿度85%を超える環境での塗装はできません。
また水性塗料はベースが水のため低温状態が続くと凍ってしまいます。一度凍った塗料は解凍しても元の状態には戻りません。そのため気温が5度を下回る環境での塗装もできません。
水性塗料の塗装は気温5度以上・湿度85%以下が条件となります。
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塗料の種類にもよりますが、塗料に対して10%〜20%程度まで水を加えて薄めることができます。(注:薄められる割合は種類によって違うので、必ず使用方法等をご確認ください。)
塗料の状態を見ながら少しずつ水を加え、混ぜながら粘度を調整してください。ただし、規定の割合を超えて水を加えると、塗料の性能が低下する場合があるので注意しましょう。
また着色塗料をご使用の際に色を薄くしたい場合には、水を使用せず、同タイプの透明塗料(カラレスまたはレジューサーなど)を加えて濃さを調節しましょう。
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水性塗料の塗装に使用した用具は、水で洗い流すことができます。使用済みの刷毛は水できれいに洗い、ウエスなどで水気を拭き取った後、風通しの良い所でしっかりと乾かしましょう。使用済みの受け皿などは、残った塗料をウエスや古新聞などで拭き取った後に水洗いすると良いでしょう。また、使い捨ての内容器などを使用している場合は、そのまま塗料を乾燥させ、自治体のルールに従い処分しましょう。
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パウチ内の空気を抜いた状態できっちりと蓋を閉め、冷暗所で保存してください。特に冬期間は凍結しない場所に保管してください。水性塗料は一度凍ってしまうと使用できなくなります。また、子供の手の届かないところに保管し、誤飲・誤食をしないように注意しましょう。
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水質汚染や配管の詰まりの原因となるため、余った塗料を排水に流すことは絶対にしてはいけません。 余った塗料は古新聞などに塗り広げて乾かし、小さく折りたたんでから各自治体のルールに従い処分しましょう!
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